私たちが作業を行うのは、昔から茅葺屋根として残ってきた住宅や文化財などが主な対象です。
古くなった茅葺を解体し、葺きあげ・棟作り・仕上げまでの一連の作業を行います。
耐用年数は環境によって変わりますが約30年ほど。
老朽化すると雨漏りの原因にもなるので、茅を差して補修を行うなど適切な維持管理と定期的な葺き替えが必要です。
手間と時間・労力を伴う作業なので、大きな工事の時にはフリーの職人さんが仲間となったり、逆に私たちが別の業者の要請を受けて、遠方に支援に出向くこともあります。
①修理前
②解体作業
③葺きあげ作業
④棟作り作業
⑤仕上げ作業
⑥完成
世界中で最も原始的な屋根と言われる茅葺屋根。その歴史は日本でも縄文時代までさかのぼると言われています。
現在でも世界文化遺産の「白川郷」や、五箇山の合掌造り、地方の武家屋敷や宿場町などでは、今でも茅葺屋根を見ることができます。また、伊勢神宮の屋根も茅葺です。
吸音性・断熱性・保温性・通気性などを兼ね備えた屋根材は、四季のある日本にはとても相性がよいのです。現代技術をもってしてもこれらの性質を満たす屋根材はなかなか作れません。
しかしながら「火に弱い」という弱点があり、現在では山間部などを除き新築の住宅などに施工することはできなくなりました(※建築基準法による)。また昭和30年以降、高度経済成長期を境に結の文化が失われ茅葺は激減し、他の屋根材が普及したことや葺き替えの材料となる茅の減少・職人の減少によりその確保が難しくなった事で相応のコストもかかるようになり、徐々にその数は減ってきています。
そのような中、2020年に「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。その技術の中に「茅葺」と「茅採取」が含まれています。その技術もさることながら、まさに今注目されているSDGsの仕組みが茅葺にあることも、未来へ向けて守り受け継ぐべきものであると認められた要因の一つなのです。
茅葺の材料となる茅は、「茅場の西の横綱」と言われる阿蘇の草原で刈りとったものです。(東の横綱は富士山麓)
阿蘇でもとても寒い時期の1~4月、ススキが枯れるのを待ち、鎌で丁寧に品質を見極めながら刈り、一つ一つ約60㎝周に結束しトラックで倉庫まで運搬。
1シーズンでトータル15000~20000束を集めますが、その中の3割近くは県外へ出荷しています。今、日本国内は深刻な茅場不足が叫ばれれています。文化財の修復にも毎年一定の量が必要ですが、確保が難しいのが現状です。
野焼きで焼く前にできるだけ多くの茅を刈って材料として確保するのと同時に、新たな良質の茅が育つ草原にすることも私たちの大きな事業の1つです。
茅という植物はありません。「茅」は屋根を葺く草の総称です。ススキや葦(ヨシ/アシ)、チガヤ、カリヤスなどのイネ科の植物で、茅葺の材料となるものを「茅」と言います。
通気性や遮熱・断熱・吸音性に優れた茅葺ですが、1000年を越える悠久の時間を感じる風合いからも愛されていることや、自然素材で温かみを感じる事の出来る茅が近年再注目されています。そんな中、当工房でも未来につなぐ現代の茅葺として茅壁や装飾、インテリアとしての茅葺の挑戦も行なっています。ひとりでも多くの人に茅葺を身近に感じ触れていただきたいという強い思いがあるからです。同時に茅葺の特性を生かした犬小屋の制作なども承っています。
また、当工房では茅葺がステータスといわれるヨーロッパに研修に出向いたり、職人同士での技術交流を行いデザインや装飾方法などを積極的に学んでいます。
小、中、高校での出前授業や体験教室。色々な地域での子供からお年寄りまで茅葺の体験が出来るワークショップを積極的に行っています。また、イベントで茅アートのオブジェを作ったりして、茅葺や阿蘇の草原のこと、そして当工房のことを知っていただく活動も大切にしています。